2020/07/18

 

この歳になれば風邪を引いたくらいじゃ誰も心配してくれない。むしろ怒られる。自己責任、自己管理、自己解決。これは私の話ではなく誰かから聞いた話。私は未だにぬくぬくとした環境に居て風邪を引いても心配してもらえる。誰かが悪いとかそういう話ではない。私が私で選んだ場所がここというだけだ。

 

二年前。上京して数ヶ月。ある日突然電車に乗れなくなった。一日目は改札を出た。二日目は電車を降りた。三日目は降りれなかった。四日目は乗り換えができなかった。最後は家を出ることさえ出来なくなった。ちゃんと早起きをしてお弁当も作った。ちゃんと服も着たしメイクもした。それなのに会社に行けなかった。あのとき誰も心配してくれなかった。これもまた誰かが悪いとかそういう話ではない。この歳になればみんな自分のことで精一杯なんだ。一つ穴が開いたくらいでは誰も気付かないんだ。そう思った。

 

私は暗い人間だから暗い話しか書けない。大体のことはまあいいやってなる。面倒くさい。疲れたくない。他人を疑いたくない。自分のせいにした方が楽だ。こんな風に生きてきたけど、別に支障が出たこともない。少しばかりの気疲れは慣れてしまった。愛想笑いをして何でもかんでも首を縦に振る。誰かに迷惑をかけなければそれでいい。まあいいや。なんでもいいや。

 

なぜ言葉を紡ぐのか。そればかりを考える。誰かのためには上っ面。結局は自分のため。少しでも未来の私が後悔しないよう今この瞬間を書き留める。二年前。東京で働いていた頃に書いていたメモが見つかった。あの頃の日記も残ってる。過去の私が紡いだ言葉を未来の私が読む。ゆっくり、ゆっくりと全身が痺れていく感覚を味わう。間違いなくそこに後悔はない。

 

大体のことはどうでもいいしなんでもいい。そのくせ大きな選択肢が目の前に立ちはだかると必ずと言っていいほど間違えてしまう。歳を重ねるごとに自分のことは自分だけのことになっていく。誰かが決めてくれるわけではない。その難しさが身に染みる。立ち止まる余裕さえ与えてくれず時間は流れていくけれど大体のことはなるようになってきた。こんな人生に甘えたままでいいのか。少しだけ背筋が伸びる。

 

私はくだらない人間だからくだらない文章しか書けないらしい。例えばオーロラが見たいと思って本当にオーロラを見に行こうとするような人間ではない。それくらいくだらないらしい。映画の中で不幸を頭から被る主人公に憧れてしまう。青春はまだ続いているもんだと信じて疑わない。本当に馬鹿馬鹿しくてくだらない。

 

年がら年中、中途半端に体調が悪い私は上がることもなく下がることもなく生きてきた。ポンッと押されると崩れてしまいそう。フッと息を吹きかけられると散ってしまいそう。そんなことを考えながらも生きてきた。きっとこれからもそうなんだろう。少なくとも死にたいな死ぬんじゃないかなって眠る前に考えてるうちは私は生きているんだろう。そんなもんだろう。