2019/12/25

 

頭の中には沢山のストックがある。寂しい夜に思い出したい言葉だったり清々しい朝に触れたい音楽だったり年の瀬に懐かしむための今までだったり。何でもない毎日が積み重なればいつかの自分を救うためのストックに生まれ変わる。例え美化された記憶だっていい。私の頭の中には沢山のストックがある。

 

この2年で住む場所が3回変わった。働く場所は4回変わった。去年が去年でなくなることへの恐怖、そして来年が今年になってしまう恐怖、先の見えない不安よりも戻れない道ばかりが繋がっていく不安の方が私には大きいように思う。

 

好きだった人と映画を観てピザを食べたクリスマスイブの話はもうしない。好きだと言ってくれた人と恋が始まったクリスマスイブの話だってもうしない。大きなツリーがキラキラと輝いている世界ではなく狭い部屋の小さいコタツで言葉を紡ぐ今の時間を生きている。それでもやっぱり脳裏に浮かぶあの日々は一生私を包み込むのでしょうか。

 

気付いた頃からおかしかった。溢れるほどの何かが全身を巡っているのに声にして伝えることがどうしてもできない。伝えたい、届けたい、教えたい、声にしたい、分かってほしい、知ってほしい。それなのに出てくるのは涙ばかりで誰にも何にも伝わらない。

 

ずっと欲しかった無印のピアスを飾るアクリルケースを買った。Netflixで全裸監督を一気見した。携帯料金を初めて自分で振り込んだ。新しくできた図書館にはまだ行けていない。新しい仕事には少しずつ慣れてきた。大好きなテレビ番組の録画を見ながら泣いたりもした。来年からは日記を書こうと思う。

 

相変わらずお金のことを考えたり、未来のことを考えたり、時々不安に押しつぶされそうになったり、誰かに対して愛おしく感じたり、怒りを覚えたり、人間らしいと言われればその通りで。ちっぽけだと言われればそれも納得がいくような気がして。朝起きてカーテンを開けたとき、目に入り込んでくる光に全てを委ねて何とか明日に向かうのです。

 

春になれば鎌倉へ行きたい。江ノ電に乗って七里ケ浜で下車する。海岸沿いを歩きながらあの映画のあのシーンを思い出す。鎌倉駅に戻って小町通りを歩く。お団子を食べて可愛いハンカチを買って駅前のベンチで時間の流れを感じて帰りは横浜に寄って中華街へ。何度も目を瞑りシュミレーションをした。実現はきっと近い。

 

来年の目標を立てた。いつものペンで、いつものノートに、思うがままに書いてみた。私はいつも私自身に負けてしまう。頑張れと言われた分、頑張らなくちゃいけないと思ってしまう。来年は今よりも自分のことを好きになりたい。

 

頭の中には沢山のストックがある。今日引き出したものは小さい頃のある夏休みの思い出だった。セミの鳴き声や陽炎。日曜日の朝のアニメ番組。こんな寒い冬に思い出す夏の思い出は当時よりもずっとずっと切ないものだった。もしかすると今の私を救ってくれるなんて嘘かもしれない。どこまでも真っ暗な場所へ引き摺り込まれてゆく私を誰か早く助けてほしい。