2019/12/03

 

近況。今年も最後の月になった。引越し先は地元よりも寒くて歩いているだけで指先が凍る。新しい仕事を始めて1ヶ月が経った。ネットニュースであのコンクールの今年の受賞者を知る。近くに大きな図書館ができたらしい。私が生きるべき場所はここにある。

 

昨日の夜はきのこ帝国の猫とアレルギーを聴きながら寝落ちした。気持ちよかった。とんだ茶番劇だった映画のエンドロールを眺めながら「最近いい映画観てないよなー」と思うとき、もうこんな話をする相手さえ近くにはいないことに気付く。生身で会話をする大切さをここ数年で失いかけている。知らない人と簡単に繋がれる時代に私はまだ独り、話し相手を探している。

 

汐留のブルース・リーが流れる香港料理のお店で食べた酸っぱいスープの味が忘れられない。一緒に食べた友達と色んな料理を三等分した。ごま団子は美味しくて1人1皿ずつ注文した。そのまま夜勤の仕事へ向かった友達とはあれっきりちゃんと会えていない。1年くらい前に仕事を辞めてアナウンサーになったと連絡がきた。元気にやってるといいな。酸っぱいスープの味を思い出すたびにあの子の名前を検索する。

 

太陽の下で干したばかりの布団と枕。部屋の机の上に畳んで置かれている昨日出した洗濯物。休憩時間に食べるタッパーに入った小さな雑穀米のおにぎり。なくなると補充されているトイレットペーパー。キッチンの窓際で育てている豆苗。私の今の生活は、こんな感じ。

 

色んなものを整理した。例えばカメラロールにある溢れんばかりの写真とか。見返すわけでもないのに溜めてあったレシートの山とか。必要もないのに集めていた観光地のパンフレットとか。お金とか。不特定多数の人に見せていた「いいね」付きの投稿とか。色んなものを整理した。ゴミ箱が溢れ出してこぼれたものを拾い集めまた同じことの繰り返し。そんな未来に目隠しをする。

 

レンタルビデオ屋さんで、借りもしないのに好きな作品のタイトルを指でなぞる。CDショップで、買いもしないのに好きなアルバムのタイトルを探す。好きなものに触れるとき、誰かと分かち合える日のことを考える。あの子ならどんな反応をするかな、とか。

 

カラオケは苦い思い出が多すぎる。誰かは「初めてのセックスはカラオケだったから私はきっと大事にされてなかったんだ」と言ってた。私は酔っ払った人たちが楽しく歌い踊り狂う深夜のカラオケボックスを後にしてタクシーに乗り込んだあの夏を思い出した。

 

河原町の古着屋さんで買った重たいコートを今年も羽織る。梅田の雑貨屋さんで買った肌触りの良いマフラーは今年でもう3年目くらい。汚れが目立ってきたコンバースをさらに潰して履く。スケートボードに乗りながら食パンを咥えどこかへ向かう私の夢を見た。あまりにもダサくて、朝一番の笑いが部屋に響く。

 

帰りたい場所があるって良いことだなと思う。会いたい人がいるって良いことだなと思う。やりたいこと探したいもの見つけたい場所がある。欲しいもの辿りつきたい答え届けたい言葉がある。私が生きるべき場所はここにある。明日は新しくできた図書館に出かけよう。