2019/10/02

 

時々どうしようもないことを考える。例えば私の人生も事あるごとにドラマのような回想シーンが挟まればいいのになあとか。過去に執着する癖は治せない。どれだけ大人になってもあの頃の自分に戻れるとどこかで期待している自分がいて怖い。この先もう「大人」以外の者にはなれないというのに。

 

引っ越しの準備が進まない。環境を変えて十数年ぶりにママと暮らすことになった。家族には内緒にしてるけど私にはママと暮らしていたときの記憶がない。理由は分からない。思い出せるのは本当に辛くて痛くて悲しい記憶か、本当に嬉しくて優しくてあったかい記憶だけ。真ん中だけがぽっかり空いたままだ。どのようにママのご飯を食べてお風呂に入って絵本を読んでもらったり髪を乾かしてもらっていたのかどうしても思い出せない。お弁当を作ってもらった記憶だって残っていない。このことをママに話すと、泣きながらどこまでも一緒に堕ちていってしまいそうで怖くて言えない。

 

それにしても引っ越しの準備が進まない。テレビとダンボール箱しか持っていかないからと油断しているのかもしれないな。小学生の頃に買ったCDの歌詞カードを読みながらラジカセに手を伸ばしてしまっては我にかえる繰り返し。何一つ進みゃしない。

 

AquaTimezもチャットモンチーも存在しない未来にどう期待すればいいのだろうか。年号が変わったことも、増税したことも、私の中ではそれほど重要なことではないように思う。そんなことよりも新しい音楽が生まれない世の中の方がよっぽど怖いんだ。

 

夏が終わってからずっと欲しかったとても可愛いTシャツを注文した。何事にも踏み出すまでにものすごく時間がかかる。働かないといけないと思う気持ちはあっても探すまでに時間がかかる。その後は履歴書を買うまでに時間がかかる。少し違うけどサイゼリヤに行くと必ずドリアかパスタで数分間は悩んでしまう。結局いつもパスタを選んでドリアを食べる友達を見ながら「ああ〜やっぱりドリアが良かったかなあ〜」なんて後悔してる。アイスの味には迷わないのに。

 

月曜ドラマの朝顔がとても良かった。美味しいご飯が並ぶ食卓で、家族が愛娘をニコニコと見守りながら大人の話をさりげなくするあの感じ、とても良かった。テーブルの四角にはちゃんとコーナークッションが付いているところも、とても良かった。誰かに教えたくなるような良かったがたくさん詰まっていて、とても良かった。

 

カーテンの隙間から入る夜風が気持ちいい。新しい目薬は目が沁みなくて少し物足りない。行方不明の女の子早く見つかってほしい。みんな結婚の発表をしていて幸せそうで羨ましい。足の爪のペディキュアはそろそろ寿命みたい。年金とか税金とか保険とかそういうの全部めんどくさい。よく分かんないけど寂しくて切ないから平成に戻りたい。戻れない。もう前を向いて未来を進むしか方法がない。

 

誰にも分かってもらいたくないことと、誰かにも分かってほしいことがごちゃまぜになる。好きな芸能人の魅力は私だけが分かっていればいいけど、美味しかった親子丼の味はみんなにも知ってほしい。私が今抱えてるあれやこれやは誰にも分かってもらえないから教えない。

 

時々どうしようもないことを考える。例えば私の人生も都合よくドラマのような「何年後」で時間が飛ばせたらいいのになあとか。決して今が辛くて未来が明るいとは限らないけど。それでも少しでも全てが大丈夫になることが何よりも必要で何よりも救われる方法なんだ。