2020/08/01

 

私は別に幸せになりたいわけじゃない。愛されたいわけでも守られたいわけでもない。ただどれだけダサくても馬鹿みたいでもそれなりに心がじんわりと温まるエンドロールを迎えられる人生を送りたいだけ。ページをめくりたくなるような人生を送りたいだけ。退屈せずにゴールまで辿り着けたら上等だ。そのときは私は私のことを褒めて称えてあげようと思う。

 

夢を見てるみたい。毎日のように変化する数字の中で今もまだ目を開けたまま眠っている感覚が抜けない。なんなんだろうな、なんなんだろうかこれは。私たちは何と戦ってるの。何を正義と呼び何を敵と呼ぶの。正解のない問いをいつまで続けるの。なんなんだろうな、本当になんなんだろうかこれは。

 

体全体に染み込んだ愛着は簡単に落ちてくれない。頭ん中にある引き出しはいつだって全開で散らばったままで片付けは終わっていない。好きだなあとか大切だなあとかそういう気持ちは何よりも誰よりも愛おしくかけがえのないものだった。自ら手放す日が来ないことは知ってた。だからと言って離れざるを得ない日が来ることも願っていなかった。言葉にできない。過去は過去ではなくあの頃の私にとっては「今」であり「未来」だった。言葉にならない。私はどうすればいいんだろう。

 

一曲一曲に刻み込まれた思い出。一瞬一瞬に焼き付けた思い出。形として残るもの。記憶として残るもの。直接的なもの。間接的なもの。あれもこれもどれもこれも全てを過去は過去のものとして。今でも未来でもなく過去のものとして。離れざるを得ないときがやってきた。忘れろとは言わない。だけどせめてこれからの私を苦しめる材料にはならないでほしい。

 

八月になった。ついに梅雨が明けるらしい。眩しい日差しに目を細める。踏切の前で見た陽炎。去年はひまわり畑に行った。今年は何もできない。冷たいカルピスが飲みたい。去年は船に乗った。今年は何もできない。今年は数歩先の夏の終わりさえも想像できない。できるだけ笑っていられたらそれでいい。

 

人生は長い。それなのに早い。去年の暮れから楽しみにしていたドラマはもう最終回まで終わってしまったし中止になって落ち込んだライブさえも既に数ヶ月前の出来事になっている。戻りたい時代なんて多分ない。やり直したいタイミングも多分ない。もしもあの頃に戻ったとしてもきっと親は離婚する。ママは病気になるし家族はバラバラになる。時間をかけてようやく今を迎えた。今がいいとは思わない。ただあの日々を繰り返すのも耐えられそうにない。やっぱり過去は過去なんだ。戻ってくることのない過去なんだ。

 

八月。今日も正解のない問いを続けた。この人生は一直線にあるものではなく何通りにも枝分かれしていてほとんどが途絶えている。テストの時間にこっそりカンニングをするかのように周りの意見に耳を傾けて自分のものにしてしまう。そんな世の中で今日も正解のない問いを続けた。今年の夏はまだまだ長そうだ。