2019/05/06

 

数ヶ月、東京で働いていた。そのときから各駅停車以外の電車は乗れなくなった。昔から各停が好きだ。だけど急行も好きだった。今はもう各駅停車しか乗れなくなった。地元から大阪阿倍野橋へ向かう電車からは河川敷が見える。私はあの景色を見るためだけに生きてる。ときどき、そんな錯覚に陥る。

 

あまり流行りが分からない。「エモい」も上手く使えない。ただ私にはKANA-BOONとAquaTimezを聴いたときにだけ湧き上がる感情がある。もしかするとこれを「エモい」と言うのかもしれない。…エモいなあ。

 

今日はちゃんと早起きをした。朝ドラを見ながらメイクをして髪の毛もアイロンでまっすぐにした。だけど朝ご飯は食べられなかった。仕事場についても誰も来ていない。私はたった3時間で職場を出てしまった。ずっと胸の奥にあるグニャグニャした違和感はなんだろう。いつも季節の変わり目は風邪をひく。

 

ママは子供みたいに笑って子供みたいに拗ねる可愛らしい人だ。ママが家を出ていってからベランダに洗濯物を干さなくなった。カーテンも開かなくなった。食器棚にあるお茶碗は、まだ家族4人分並んでいる。

 

パパは酔っ払うとママの誕生日に披露するはずだった斉藤和義のずっと好きだったをギター片手に歌い出す。この間占い師に「お父さんとは縁がありません」と言われた。縁がないってなんだ。なんなんだ?

 

重松清の疾走に中学生のシュウジが大人の女性に「セックスして」と言うシーンがある。とても悲しくて苦しくてやるせない物語。映画でシュウジを演じたのが、17歳の手越祐也だったという事実にたまらなく心が震えるときがある。彼の穴ぼこのような瞳が忘れられない。

 

誰かの未来を想像する能力なんて持っていない。あんなにもメイク映えしなかったあの子は唇を真っ赤にして微笑んでいる。あんなにも恥ずかしがり屋だったあの子は彼氏と撮ったプリクラをSNSに載せている。何にも変わらないのは私だけかもしれない。

 

お昼の各停はどうしてか悪いことをしている気持ちになる。それでも河川敷は変わらずにキラキラと輝いていて私の心を救うんだ。なんとなくスキマスイッチボクノートを流してみるといい感じだった。これからは積極的に聴こうと思う。誰かにも教えてあげたい。

 

生まれ変わったらセカチューのアキみたいに明るくて笑顔が眩しくて大好きな人に愛してもらえる女の子になるんだ。なってやるんだ。なんてことを考えながら、まだ最寄駅は先だから少しだけ目をつむろうか。