空を見上げたとき、飛行機が近くにたら嬉しい。月が笑っていたらもっと嬉しい。虹がかかっていたらもっともっと嬉しい。何よりも早く写真を撮って好きな人に「虹が出ていたよ」と送りたい。
早く帰りたいと思う心情はなんだろうか。こんなもんでは足りない!まだまだ働くんだ!と思えない心情はなんだろうか。カラオケの帰りに感じてしまうカラオケに行きたいという欲望が仕事にもあればいいのに。
私は自分の価値観を人に押し付けるようなことはきっとしない。だけど、チャットモンチーのシャングリラのイントロを聴いて胸が高まらない人には賛同できないしサカナクションの新宝島を聴いて体がうずかない人にも賛同できない。どうしても分かってほしいときだってあるんだよって話だけど上手に伝えられなかった。
最寄駅から家までの道は人通りが少ない。明かりも少ない。23時を過ぎた頃になれば少しばかり声を出して歌っても恥ずかしくない。そう思う人が多いのか深夜の住宅街には、よく若者の鼻歌が響き渡っている。
もうすぐ夏がくる。夏は悲しい思い出がよみがえるから嫌だ。冬も悲しい思い出がよみがえるから嫌だ。雨の日も悲しい思い出がよみがえるから嫌だ。悲しいなんて感情は消えてなくなればいいんだ。みんなが幸せでいられるだけで暑い日も寒い日も生きてゆけるんだ。そんなことを誰も教えてはくれなかった。
ここで、ラブ&ポップのエンドロールが最高な話もしておきたい。渋谷川を歩き続ける女子高生たちに合わせて主人公が歌う「あの素晴らしい愛をもう一度」が流れだす。どんどんずれ落ちていくルーズソックスに胸がちくちくと痛む感覚がむず痒かった。不幸の捉え方は人それぞれだって教えてくれた気がした。
車に乗らないのにコインパーキングの値段が高かったら気分が下がってしまう。人生のだいたいは上手くいかないってこと私はずいぶん前から知ってたよ。今日もコンビニで1円足りずお札を出した。
窓を開けるとまだ春の風が入り込む。夏が始まる頃には私の心ははるか遠くへ飛んでいってしまってるかもしれない。何にも上手くいかないんだから仕方ない。
それでも私は空を見上げたとき、飛行機が近くにいたら嬉しい。不幸の捉え方は人それぞれだし悲しい気持ちの消し方は誰も教えてくれないけど、自分にとっての幸せを見つけるのは割と簡単だったりするんだ。