2023/10/06

 

好きなアイドルが所属していたグループのライブに行った話。好きなアイドルは3年前にアイドルを辞めた。まだ過去形になっていないのは私の中で受け止めきれていない部分があるからなんだろう。

 

あまりにも他人事。好きなアイドルが辞めてからは初めて参加するライブだった。行きの電車でようやく新譜を聴いた。悔しいけど全曲もれなくめちゃくちゃ良かった。好きなアイドルの歌声がなくても十分に成立していた。彼は周りと比べ頭ひとつ抜けた歌唱力を持っていたけど、その部分が消えたことで柔らかさと深みが増したように感じた。改めても彼の存在は「異様」だったんだな。

 

今年グループは結成20周年を迎えた。私が彼らを好きになったのは大体15年くらい前で初めてライブに行ったのは10年前だった。なんていうんだろう、もはや好きとかでもないんだよな。常備している薬でもあり毎朝食べる白米でもあり私の体をめぐる血液でもある。でも上手く説明できないからとりあえず「青春」と呼んでる。

 

大阪城ホールで行われたライブ。私ここで数年前に好きなアイドルからファンサを貰ったのっていう話は腐るほど色んな人にしてきた。好きなアイドルが出てこないライブ。なんか本当にもういないんだなと思った。寂しいとか悲しいとか色んな感情を準備してたのに割と普通に「あっはいそうですか。了解でーす」みたいなノリだった。絶対泣くと思ってハンカチを握りしめてたのに頼らずに済んだ。まあそれも1日目の話。

 

2日目はずっと一緒にグループを応援してきた子と参加した。全ての思い出を共有してきた子と言っても過言ではない。好きなアイドルがアイドルを辞める少し前から会わなくなってたんだけど、グループ20周年を機に再会を果たした。1日目は純粋にライブを楽しめたのに2日目は泣き通しだった。好きなアイドルの残像が見えた。数え切れないほどの思い出がぶわあっと蘇った。

 

好きになった日のこと、初めて行った野外ライブの花火、SNSを始めて出会った人たち、地方公演に行くための夜行バス、早朝の銭湯、何度も行った難波のカラオケ、使い道のない特典のポスター、青い封筒、押し入れに眠るペンライトとうちわ、1枚1枚メモ書きされた歌番組のダビングDVD、宝物のアルバム、しわくちゃになった銀テープの山、東京ドームのチケット、ライブの日に入ったご飯屋さんのレシート、みんなから貰った手紙、昔の携帯に保存されたブログのコピペ、授業中に書いた好きな歌詞、ワンセグで見てたMステ、カメラロールにある大量の写真、一生忘れないあの日のこと。

 

走馬灯みたいだった。ステージに大きなスクリーンが現れて彼らの歴史と共に私の歴史も映し出されているようだった。好きなアイドルが辞めてもう3年が経つ。過去に取り残されてるのは正直私たちだけだった。右を見ても左を見ても今目の前にある現実だけが全てだと受け止めた人たちばかりで。

 

あ〜私の青春は終わったんだな。

 

と思った。好きなアイドルはもういない。彼のことをもう誰も話さない。ファンの中には「え?そんな奴いたっけ?」と平気で言う人もいる。酷い言葉を投げたり今の彼を馬鹿にしたり過去の発言や行動を掘り返して批判する人もいる。私の居場所はとうになくなっていたんだな。

 

ライブに行ったことで何かが変わったかと聞かれるとそうでもない。今でも好きなアイドルがアイドルだった頃のことばかり考えてる。昔の彼の歌声ばかり聴いてる。3年前に線引きをした。自分で引いたその線の間でずっとゆらゆら揺れてる私。今が一番幸せだと言ったのは彼だ。叶えたい夢があるからグループを離れたいと言ったのは彼だ。良い形で辞められなかったのも彼のせいだ。

 

本当はずっとずっと好きなアイドルのままでいてほしかった。一緒に20周年を祝いたかった。誰もが羨む完璧なアイドルを守り続けてほしかった。小学生の私が「好きになれて本当に良かった」と心から思える存在でいてほしかった。どれだけ死にたくても好きなアイドルに会いたくて生きてきた。あなたは私の命を救ったんだよ。そう言いたい。

 

20周年を迎えたグループは死ぬまで続けていくと話してた。そうか、私の青春は終わってしまうけど誰かの青春は永遠に続くんだな。寂しいけど嬉しいな。ライブに行った日から心も体もなんだかフワフワしてる。夢から覚めていない感じがする。引きずり倒した過去の痛みや愛おしさはいつになったら消えるんだろう。

 

まだまだ時間がかかりそうか。